【レビュー】半藤一利×出口治明『明治維新とは何だったのか』

歴史作家の半藤一利さんと、元ライフネット生命社長で立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、明治維新について語り合った本です。

目次

明治維新という呼び名について

まず二人は「明治維新」という呼び名から話し合っています。少なくとも明治に元号が変わった前後で「明治維新」とは言っていなかったはず。その当時はおそらく「御一新」と呼んでいただろう。それが「明治維新」と呼ばれるようになったのは、明治13−14年ごろのことで、新政府が自分たちのやったことを正当化するために中国の古典から見つけてきた「維新」という言葉を使うようになったのだろう、とのことです。

そもそも、なぜペリーは日本にやってきたのか。それには3つの理由があると半藤さんは言っています。

  • 蒸気船の燃料である石炭の補給地にしたかった
  • 捕鯨船の寄港地にしたかった
  • 太平洋における交通路の確保と通商路の拡大をしたかった

当時のアメリカは、通商の面ではイギリス、フランス、オランダに遅れをとっていました。そこで、太平洋を横切って日本などアジア諸国へのルートを確保することが最重要課題だったのです。

阿部正弘の功績

アメリカが日本を狙っている、という情報はその数年前から入っていたようです。しかし、日本は「起こると困ることはきっと起こらない」という態度(なんかすごくよくわかる気がします)で問題解決を先延ばしにしていました。そしてとうとう実際に黒船がやってきました。そこで開国という英断をしたのが老中・阿部正弘です。彼は、「来てしまったらジタバタしてもしょうがない」と腹をくくり、200年続いた鎖国をやめて開国という選択をします。

歴史に疎い私はこれまで、外国のことを何も知らない幕府が、ペリーに迫られてびっくりして開国したんだと思っていました。でも実際は、しっかり情報を収集していて、戦える相手ではないということを分かった上で、開国という選択を選んだということです。阿部正弘は、「開国」「富国」「強兵」というグランドデザインをしっかり描いていました。

出口さんは、幕府の中から、その200年続いた鎖国という体制を自ら壊す改革を決断する勇気を持った人物だと評価しています。明治維新における最大の功労者は阿部正弘だと言っています。そしてそのグランドデザインを実現した大久保利通が二番目の功労者ではないか、と。

出口 あらためて整理すると、この「明治維新」という薩長革命の目指したビジョンは、阿部正弘のグランドデザイン通り、開国・富国・強兵の順番だったと思います。(中略)そして開国によって交易を行ない、産業革命を起こして経済的に豊かになる。これが二番目の富国です。富国がうまくいけば、軍隊を養う余裕もできるというわけで、三番目に強兵がくるんですよ。開国なしに富国はかなわず、富国なしに強兵はあり得ません。

第4章 「近代日本」とは何か

近代日本への流れ

幕末から明治新政府にかけて活躍した人物が多く紹介されていますが、その中で、吉田松陰に対する半藤さんの評価がとても低かったのが印象的でした。吉田松陰は、伊藤博文、山縣有朋の権威付けに利用されたんだ、と。

半藤 吉田松陰そのものも大した人物ではないが、伊藤と山縣はその門下生の中でも大したことないんです。
出口 それなのに、権威づけのために吉田松陰をフレームアップしたというわけですね。
半藤 そうだと思いますね。それまで大して注目されていなかったのに、彼らが「維新の原動力になったのは吉田松陰の教えだ」と言い始めた。

第3章 幕末の志士たちは何を見ていたのか

私が先日読んだ『留魂録 吉田松陰の死生観』では、松陰がベタ褒めされていたので、こうやって別の観点からの評価を見ると、おもしろいし、理解が深まる気がします。

開国後、日本は海外に留学生を送り、「富国」を進め、さらに「強兵」へと進んでいきます。そこで中心となったのが山縣有朋です。「統帥権の独立」を主張し、シビリアン・コントロールを外して軍隊が政府から独立してしまった。その後、日清戦争、日露戦争に勝ち、ますます軍国主義へと突っ込んでいくことになります。

日露戦争だってなんとかギリギリで勝ったのに、国民には「見事に勝った」という印象を植え付けた。そうすると、日本は第一のビジョンだった「開国」を捨てて、「ロシアに勝って一等国の仲間入りを果たしたのだから、もう欧米にゴマをする必要はない、自分たちで独自に進んでいけばいいんだ」と思ってしまい、富国と強兵だけで突き進んだ。その結果が、第二次世界大戦での敗戦だった、と二人は語っています。

出口 どこまで正直に情報を出すかは、市民の成熟度によっても違ってくるでしょうから、難しい面はあるとは思いますけど。(中略)しかし少なくとも日露戦争のときは、やはり正直に伝えるべきだったと思います。リアリズムなしの精神論だけではどうしようもない世の中になっていることは、西南戦争の時点でわかっていたはずですからね。

第4章 「近代日本」とは何か

まとめ

幕末から明治維新への流れ、そこで活躍した人々に対する二人の評価がとても興味深かったです。とくに、最大の功労者と評されていた阿部正弘について、歴史弱者の私は全く知らなかったので、もう少し詳しく読んでみたいなと思いました。

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