【レビュー】『ギリシア人の物語Ⅱ民主政の成熟と崩壊』塩野七生

塩野七生さんの『ギリシア人の物語』全3巻の第2巻のレビューです。

第1巻『ギリシア人の物語Ⅰ民主政のはじまり』のレビューはこちら。

第2巻の内容で大きなものは、約30年にわたりアテネの政治を牽引したペリクレス、そして、スパルタを中心とするペロポネソス同盟と、アテネを中心とするデロス同盟、その2手に別れて戦ったペロポネソス戦役についてです。

目次

ペリクレス

二度にわたって攻めてきた大国ペルシアを撃退したあと、「ペリクレス時代」と呼ばれるアテネの黄金時代を築いたペリクレス。カエサルの後を継いだアウグストゥスのように、繁栄の道を確実にする任務を任された者には、創始者とはまた違った努力や苦労が必要になる、と塩野さんは書いています。

ペリクレスの課題は5つ。

  • アテネの民主政を機能させること
  • エーゲ海の制海権を堅持すること
  • デロス同盟を堅持すること
  • アテネと外港ピレウスとを城壁でつなぎ一体化すること
  • 可能な限り戦争に巻き込まれないこと

歴史家ツキディデスはペリクレス時代を次のように言っています。

「形は民主政体だが、実際はただ一人が支配した時代」

市民集会での投票を必要とする民主政の中で30年間も連続当選することができたのは、言葉を駆使した「説得力」をペリクレスは持っていたから。ペリクレスの演説を聴く人は、最後は常に将来への希望を抱いて聴き終わったそうです。

いつの時代も言葉は大事。人を動かすのはいつも言葉の力。

また、本村凌二さんの『教養としての「世界史」の読み方』という本に、アテネのとくにペリクレス時代に民主政が確立された背景として、次のように書かれています。

クレイステネスの改革によって形式的な民主制ができ、サラミスの海戦で、下層民が戦争に直接参加したことを機に彼らの発言力が増していったことーこの二つがセットになって、いわゆる「ペリクレス時代」が訪れることになるのです。

『教養としての「世界史」の読み方』第1章 文明はなぜ大河の畔から発祥したのか

『ギリシア人の物語』第1巻でも塩野さんが書いていたように、民主政はイデオロギーで作られたものではなく、時代の流れの中から自然に選択されていったものなのかなと思いました。

ペロポネソス戦役

Wikipedia

ギリシア人の歴史の中で、彼らの運命を決めた戦争といえば、ペルシア戦役、ペロポネソス戦役、そしてアレクサンドロスによる東征の3つです。

第2次ペルシア戦役で、海上のアテネと陸上のスパルタが大活躍して大国ペルシアに完勝しました。その後の50年間は、平和な日々が続きます。それは、アテネを中心とするデロス同盟と、スパルタを中心とするペロポネソス同盟の国々がうまく棲み分けしていたから。

しかし、その平和な50年間ののち、アテネとスパルタとの間の戦いが始まります。ペロポネソス戦役です。それぞれの同盟国の周辺で起きた争いが徐々に中央部に波及してきた、ということのようですが、アテネとスパルタが直接対決することはありませんでした。だからこそ、27年もの長期間、決着がつかずにだらだらと戦うことになりました。

さらに、これまで2度にわたってギリシアに攻め入って2度とも完敗しているペルシアが、第1次ペルシア戦役以前にペルシア領だったエーゲ海東方一帯を取り戻したい、という思いから、スパルタに資金援助を申し出ます。このようにして三大国と各同盟国との間の27年にわたるペロポネソス戦役の結果、アテネはスパルタに敗れます

ペロポネソス戦役は、それに関わった三大国全ての運命を変えてしまうことになります。

アテネはデロス同盟を解散、海軍も放棄させられます。

一方、勝利したスパルタは一国だけでギリシアの覇権を手に入れたにもかかわらず、スパルタの社会構造が時代遅れとなっていたために、それができなかった。

戦役の後半3分の1で加わって漁夫の利を得た形になったペルシアですが、勝利を得たことで逆に専制君主による統制が行き渡らなくなります。その結果、70年後のアレクサンドロス大王の東征を許し、アケメネス朝ペルシアは滅亡してしまいます。

ソクラテス

ソクラテス が活躍したのもこの時代。いろんなエピソードとともに生き生きと描かれています。

プラトンによる『饗宴』読んでみたいなと思いました。

この頃の饗宴は、シンポジウムの語源ともなっている通り、みんなで家に集まって、何か一つのテーマについて話し合う場だったようです。

『饗宴』にも登場するソクラテス の弟子、アルキビアデスはかなりの美男子だったそう。やはりかっこいい男の描写となると塩野さんの筆も乗ってくるのがわかっておもしろいです。

まとめ

ギリシアでの民主政が成熟したと同時に、アテネとスパルタという大国が争うことになり、その両方とも凋落して行ってしまう、そんな時代でした。

次の第3巻は、最終巻。いよいよアレクサンドロス大王の登場です。

『ギリシア人の物語Ⅲ新しき力』のレビューはこちら

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