【レビュー】『邦人奪還』伊藤祐靖

舞台は20XX年。北朝鮮のロケット発射に対する報復措置としてピンポイント爆撃を計画しているアメリカ。その標的近くに、6人の日本人拉致被害者がいることが判明。邦人を救出するために自衛隊特殊部隊が動きます。

小説とは思えない、圧倒的なリアルさ。めっちゃ面白くて一気読みでした。

Hibino’s Point
  • 自衛隊特殊部隊の命を賭けた任務にハラハラしっぱなし
  • 任務実行の様子がめっちゃリアル
  • 上からの命令に従うだけでない、仕事に信念と誇りを持った男たちがかっこいい
目次

元・自衛隊特殊部隊員の著者だからこそのリアル

特殊作戦群(とくしゅさくせんぐん、JGSDF Special forces group : SFGp)とは、陸上自衛隊および防衛省において公式に特殊部隊と定義された部隊である。編成単位は群。特殊作戦群の訓練内容、保有する装備などは創設時から一切公表されていない。非公式だが一部からは略称で「特戦群」と呼ばれている。
Wikipediaより

最初から最後まで、専門用語とか、思考過程などの描写がひとつひとつ細かくて、すごくリアルでした。それもそのはず、著者は元・自衛隊特殊部隊員だそうです。

特殊部隊というものの存在自体、私は知らなかったのですが、ただでさえきつい訓練を毎日行っている自衛隊員の中でも、さらに精神的にも肉体的にも過酷な部隊みたいです。

家族にもその任務は話せません。どこで何をするかはもちろん言えないし、一度出動したら生きて帰ってこられるかもわからない。

そんな文字通り命を賭けた任務のために、日々想像もつかないような訓練を行っているそうです。

とくに、主役である海上自衛隊の藤井1佐と、陸上自衛隊の天道1佐が、めっちゃかっこいい。

台風の中潜水艦で北朝鮮に近づき、荒れ狂う海を進んで上陸する作戦。そんな悪条件の中決行できるのか?という総理大臣の心配に、藤井が答えるシーン。シビれます・・・

「明るいところより暗いところの方が有利です。我々の方が夜間視力が高いからです。暗さを味方にできるわけです。同様に、荒れ狂う海の中に相手を引きずり込めば、その時点で勝利を手に入れられます。それは、我々だけが、荒れ狂う海で生きる術を身に付けているからです。味方にできるのです。そこには絶対の自信があります」
「ヘリコプターは飛べるのか。台風の中を飛ぶのか」
「飛びます。飛んでもらいます。なぜならば、航空部隊はそのために訓練しているからです。彼らは安全に飛ぶことが目的の民間パイロットとは違い、有利な条件の場所に戦闘員を送り届けるのが役目です。6日後の最接近に間に合うよう、2、3日後の出港が適当です。総理、あとは総理が腹を決めていただければ、行けます」

第3章 出撃

エリート官僚 vs 現場たたき上げ

どこの世界も、上司であるエリートと、現場で実際に動く人間との間には埋められない溝があるようです。

とくにこのような特殊な任務を実行する場合には、予想外のことが起こるのは必至で、それをいちいち上司に許可を得ていては全滅してしまう。現場の人間がその場で判断して柔軟に動いていく必要がある、ということを知りました。

もしかしたら、救出する人数より、犠牲になる特殊部隊員の人数の方が多くなるかもしれない。邦人奪還作戦が発動する前に、藤井と天道が総理大臣にその覚悟を問いただすシーンがとても印象的でした。

「なぜ、救出する人数よりも多くの犠牲者を出してでも救出しなければならないのか、そこがはっきりしているのなら、先程の質問に答えるのは簡単だと思うんです。その”なぜ”が国家の意志なのではないでしょうか。我々は、拉致被害者がお気の毒だから行くわけではありません。拉致被害者を奪還すると決めた理由、すなわち国家の意志に自分たちの命を捧げるんです。そこがあやふやなのであれば、我々は行けません。いや、行きません。クビになろうが、死刑になろうが、行きません」

第3章 出撃

「本当に我々が確認させていただきたいのは、そこに強い意志が存在するかどうかなんです。共通の国家理念を追い求めている同志、同胞たる自国民が連れ去られたのだから、何がなんでも取り戻す。ソロバン勘定とは別次元、いかなる犠牲を払ってでも救い出す。その強い意志を総理ご自身がお持ちで、だから我々に”行って来い”と命じていらっしゃるのかどうかです」

第3章 出撃

まとめ

最初から最後までハラハラして一気読みでした。後半は胸が苦しくなるような場面の連続。

私たちが普段安心して暮らしている日常の裏には、日々過酷な訓練を行う自衛隊員の皆さんがいるということを改めて感じました。

読みながら映像が目に浮かんでくる映画のような小説でした。ぜひ映像化してほしいです。(北朝鮮やアメリカ的に大丈夫かは知りませんが)

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