【論文】未熟児網膜症スクリーニングはいつ始める?

Do extremely preterm infants need retinopathy of prematurity screening earlier than 31 weeks postmenstrual age?
Amy J. Sloane et al.
Journal of Perinatology Published online: 06 May 2020
DOI:10.1038/s41372-020-0681-6

目次

Abstract

目的:全ての超早産児のROPスクリーニングをAAPの推奨よりも早い生後4週で始めることの有用性を評価する。
研究デザイン:2か所の3次NICUにおいて、2006年から2008年の間に在胎27週未満で生まれて、初回眼底検査まで生きた児を対象とした後ろ向き研究。
結果:550人の新生児(在胎週数25.1±1.2週、出生体重1758±323g)に対し、修正32週までに1310回の眼底検査が行われていた。これらのうち676回(51.6%)は修正31週より前に行われていた。修正31週未満の検査で、レーザー治療適応にあてはまる児はいなかった。87/550人(15.8%)はレーザー治療が必要だったが、修正32週より早く実施された児はいなかった。
結論:在胎27週未満で生まれた児で、修正31週より前に重症ROPを発症した者はいなかった。このことは、超早産児のROPスクリーニング開始を修正31週で行うという現在のAAPの推奨を支持するものである。

Background

未熟児網膜症(Retinopathy of prematurity: ROP)は、早産児の生存率上昇に伴って、発展途上国においても先進国においても子供の視力障害の主な原因となっている。

網膜血管は在胎14週ごろから発生し、放射状に網膜内を進展し在胎36週以降網膜最周辺部まで達する。したがってそれ以前に出生した児の網膜周辺部には無血管領域が存在する。

ROPでは、無血管領域から過剰産生されるvascular endothelial growth factor (VEGF)が病的血管新生を誘導する。新生血管の周囲に結合組織が産生され、網膜をひっぱって網膜剥離を起こす。

ROP発症には未熟性と酸素投与が大きく関与している。在胎週数、出生体重が少ないほど発生率が高く、重症化しやすい。また、高濃度酸素投与も関与していると言われている。

治療として、網膜光凝固術(レーザー)、抗VEGF抗体の硝子体投与がある。適切な時期に必要な治療を行うために、スクリーニング検査が重要である。

日本では、スクリーニング検査の対象となる症例は、在胎34週未満、出生体重1800g以下の児。在胎26週未満出生では修正29週から、在胎26週以上出生では生後3週目には初回検査を行うことが勧められている。

Summary

この論文によると、27週未満出生の早産児で、修正32週より早くROPに対する治療が必要となった者はいませんでした。レーザー治療を行った中央値は修正35週(32-46週)。

AAP(米国小児科学会)は超早産児の初回ROPスクリーニングを修正31週としていますが、今回の結果はそのAAPの推奨を指示するものでした。22〜23週の超早産児でも、治療時の修正週数は同じでした。

ROPは早産児の視力予後を左右する大きな合併症なので絶対見逃したくないし、治療のタイミングを逸したくはないのですが、眼底検査は早産児にとって侵襲的で負担も大きいため、あまり早い時期に行うことにはリスクが伴います。

日本では修正29週から眼底検査を始めることが多いですが、今回の結果をふまえると、31週より早い時期からスクリーニングを始めなくてもいいということなのかもしれません。

AAPのROPスクリーニングについての推奨
https://pediatrics.aappublications.org/content/142/6/e20183061

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