【レビュー】『バッタを倒しにアフリカへ』前野ウルド浩太郎

子どもの頃からの夢「バッタに食べられたい」を叶えるためにアフリカへ飛び込んだ若き研究者、前野ウルド浩太郎さんのバッタ愛溢れる一冊です。ちなみに「ウルド」とは、アフリカ・モーリタニアでの研究活動が認められ、授かった現地のミドルネームです。

アフリカでは、サバクトビバッタが大発生して農作物を食い荒らすことで深刻な飢饉が起きて、国際的な問題となっています。

日本でバッタって小さい可愛い昆虫っていうイメージだったよ。

前野さんは、日本人では珍しい、サバクトビバッタ防除の研究者です。大好きなバッタの大群に囲まれながら、アフリカの食料問題も解決できる、と思い、研究の道に進みました。

目次

バッタの大群を研究する

バッタの大群発生が、いつ、どうやって起こるのか。

大群が発生した瞬間を捉えて、その共通点を洗い出すことで、発生を予測し、未然に阻止することができるだろう、と考え、前野さんはモーリタニアというアフリカに国に渡ります。モーリタニアは干ばつなど自然が厳しく、決して裕福な国ではありません。それなのに、武力紛争が起きた隣国マリからの難民を受け入れていました。

自分たちがどんなに大変な目に遭っていても、自分よりも困っている人がいたら、自分の身を削ってでも助けようとする、このモーリタニアの献身的な精神は、いついかなる時でもぶれない。厳しい砂漠を生き抜くために、争い奪い合うのではなく、分け与え支え合う道を選んできた。この国民性が、サハラ砂漠という厳しい環境でも生きることを可能にしてきたのだろう。

第4章 裏切りの大干ばつ

しかし自然現象が相手なだけあって、なかなかバッタの大群が発生しません。そこで一旦フランスに行くことに。

それにしても、目標とは生きていく上でなんと重要なのだろう。あるとなしとでは毎日の充実感が大違いだ。域内r「アフリカのバッタ問題の解決」などと、果てしない目標を掲げてしまった日には途方に暮れてしまう。まとめやすいものから順に形にしていき、完成の喜びを味わい、調子に乗ったところで次にもっと時間のかかるものにチャレンジしていく作戦をとった。やれやれ、自分で自分のご機嫌をとるのも一苦労だ。

第5章 聖地でのあがき

バッタの大群が現れない

しかし、そこは自然が相手。アフリカの研究室にいる間になんとバッタの大群が発生しなかったのです。このままでは何も実績を残さないまま契約期間が終わってしまう。日本に帰って給料をもらいながら別の研究をするか、無給になってもアフリカに残ってバッタ研究を続けるか。人生の選択を迫られます。

迷った結果、研究所の所長に必死の思いで伝えた言葉。

おこがましいですが、こんなにも楽しんでバッタ研究をやれて、しかもこの若さで研究者としてのバックグラウンドを兼ね備えた者は二度と現れないかもしれない。私が人類にとってラストチャンスになるかもしれないのです。研究所に大きな予算を持ってこられず申し訳ないのですが、どうか今年も研究所に置かせてください。

第7章 彷徨える博士

そんな前野さんを所長が励ましてくれます。

いいかコータロー。辛い時は自分よりも恵まれている人を見るな。惨めな思いをするだけだ。つらいときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。嫉妬は人を狂わす。お前は無収入になっても何も心配する必要はない。研究所は引き続きサポートするし、私は必ずお前が成功すると確信している。ただちょっと時間がかかっているだけだ」

第7章 彷徨える博士

こんなこと言われたら泣けますね。。。

バッタ博士、日本へ

安定したポジションが得られない中、日本に一時帰国した前野さんは、とりあえずは「バッタ博士」として、知名度をあげよう、と思い立ちます。書店でのトークショー、動画配信など、できることはなんでもやる!という気持ちで活動していたら、雑誌「プレジデント」の社長の目に留まって連載をさせてもらえることになりました。

ストレートにやりたいことだけをやるのではなく、少し遠回りに見えても、その時に自分ができることをがむしゃらにやっていればいつか道は開けるんだ、と思いました。

さらに日本での研究者のポストを得るために、京都大学白眉プロジェクトに応募します。その面接試験でのまさかの演出に爆笑してしまいました。

まとめ

前野さんのように、熱意と学力と実績があったとしても、研究者の道は厳しいという現実・・・

サハラ砂漠での研究の日々。形骸で研究するということ。日本で研究ポストを得ることの難しさ。

文章がとても面白く、グイグイ惹きつけられました。そしてとにかくバッタへの愛に溢れた本でした。

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