モルモン教徒の家庭に生まれ、現代科学や教育は政府の洗脳だと思い込む父親から学校に行かせてもらえず、危険な廃材集めの仕事を手伝わされて育った著者が、自分の意思で大学へ進学するに至るまでの半生を綴ったノンフィクションです。
HONZのレビューで見て、おもしろそうだったので読んでみました。
この本を読んで感じたのは次の3つです。
- 家族を振り切ることの難しさ
- 教育の大切さ
- 人生は自分の意志で変えられるという希望
家族を振り切ることの難しさ
人は育った環境の影響を強く受けます。遺伝か環境か、とはよく言われますが、人の考え方は育ってきた環境によって作られる部分が大きいと私は思っています。
著者も、モルモン教徒の家庭に生まれ、現代科学や学校教育は悪だ、政府の陰謀だと教え込まれて育ちました。
著者が幸運だったのは、先に家を出て大学に進学した兄がいたこと。父親の教えに疑問をもっていた著者は、兄の後押しもあり大学へ進学します。
外に出てから見た実家は、やはり異常だった。それに気付きながらも、実家とは完全に縁を切ることはできない。何かあればすぐに実家に戻り、大怪我をした兄や父の面倒をみています。
そのことに自己矛盾を感じ、悩む著者の様子が胸に刺さりました。
何かが変わってしまった。私はものごとを知る道を歩みはじめ、兄、父、そして自分自身について、根本的ななにかに気づいた。私たちが故意でも偶然でもなく、無教養にもとづく教えを他人から与えられたことで、私たちの考えが形作られたことを理解したのだ。
第20章 父たちの独唱会
教育の大切さ
そして何より、教育の大切さ。教育によって、知識を得るだけでなく、いろいろなものの見方を知ることができます。
そして、学ぶということは、将来についての希望を持つということ。「私は将来こうなりたい、もっといろんなことを知りたい」という希望があるから学ぶことができるのだと思います。
以前読んだ石井光太さんの『漂流児童』という本に、こどもホスピスを取材した様子が書かれていましたが、難病の子供たちにとっても勉強をすることは非常に大事であると書かれていました。
勉強をすることは、未来を想像し、そこに向かって歩んでいく行為。そしてそのことが子供たちの生きる原動力になるのだと。
職員の方の次の言葉がとても印象的でした。
私は、子供にとって勉強は『生きるエネルギー』だと思っています。実際に、院内学級に来て子供たちが授業を受けはじめると、みるみるうちに変わっていきます。私はそんな子供に言います。自分の気持ちに素直になっていいんだよ、したいことをしていいんだよ、自分のために生きていいんだよって。勉強には、その子を未来へと推し進める力があるんです。
小さな命を輝かせるー子供ホスピス
人生は自分の意志で変えられるという希望
どんなに置かれた状況が厳しくても、明るい未来なんてないと思われても、自分がよりよく生きたいと思って行動すれば、必ず道は開ける、という希望をもらいました。
きれいごとかもしれませんが、そして著者は能力があって運が良かっただけ、という見方もあるのかもしれませんが、私は素直にこの本から教育の大切さを感じました。
あと、このような状況に置かれている子供たちがもしたくさんいるのなら、もっと世界は広いということを知って、自分の将来を自分で決められるようになるといいなと思いました。
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