【論文】パンデミック中の休校は流行抑制に有効か

School closure and management practices during coronavirus outbreaks including COVID-19: a rapid systematic review
Russell M Viner et al.
Lancet Child Adolesc Health
2020;4: 397-404
DOI:10.1016/s2352-4642(20)30095-X

目次

Abstract

COVID-19パンデミックに対し、107か国が2020年3月18日以降国レベルでの休校を実施している。学校対策がコロナウイルスのアウトブレイクに有効かどうかは明らかでない。我々は、3つの電子データベースを用いてコロナウイルスのアウトブレイク中の休校や、その他のsocial distancing対策の有効性を評価するためにsystematic reviewを行った。616の論文のうち16の論文を対象とした。COVID-19に対する休校は中国本土と香港ですぐに行われた。しかし、感染コントロールに対する休校の相対的な貢献についてはデータがない。中国本土、香港、シンガポールにおけるSARSアウトブレイクのデータによると、休校はエピデミックコントロールには貢献しないことが示唆された。いくつかのSARSのモデリング研究は相反する結果であった。最近のCOVID-19のモデリング研究によると、休校単独では2-4%しか死亡を減らさないことが予測された。これは他のsocial distancing介入よりもずっと少ない。政策担当者は、COVID-19に対する休校を考慮する際には、エビデンスがはっきりしないということを自覚するべきである。そして、他のsocial distancing対策との併用を考慮すべきである。もし、拘束力のあるsocial distancing政策が長期間行われるのであれば、学校におけるより混乱の少ないsocial distancing介入のさらなる検討が求められる。

Background

2003年のSARS、2009年のインフルエンザパンデミック、今回のCOVID-19でのデータを使用した。SARSやインフルエンザのパンデミックに関する研究で、休校は感染者数のピークを下げたり、ピーク時期を遅らせる効果があったことが示唆された。再生算数R<2のときや、大人よりも子供で感染者数が多いときにはより大きな効果があった。

しかし、学校が再開されると再び感染が増えること、休校や学校再開の適切なタイミングについてのコンセンサスがないという問題も指摘されている。2003年のSARSパンデミックの時は、アウトブレイクの6週間後から2ヶ月以上休校が行われた。COVID-19はR>2.5と高く、大人も子供も感染率は同じらしいので、休校の効果は高くないのではないか。

教育はその国の将来的な労働者の健康と富の強力な予測因子である。長期間の休校が教育上のアウトカム、将来の収入、若者の健康、将来の国の生産力に及ぼすインパクトについては数値化されていない。

Question

モデリング研究の手法
休校単独の効果をどう判定するのか
子供たちの学力や体力への影響

Summary

休校は、確かに感染者数のピークを下げたり、ピークを遅らせるという効果はあると思うが、それだけではダメで、他の対策と組み合わせて行う必要がある。子供だけ休んでも効果は限定的だと考えられるので、社会全体でsocial distancing対策を講じることが大事だろう。

休校がその国の将来的な教育や経済に及ぼす負の影響もあるはずですが、これまで量的に評価されておらず、休校開始や登校再開のタイミングについてもコンセンサスがありません。今回のCOVID-19に対する日本の休校についても後からきちんと評価をして、今後につなげて欲しいと思います。

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