「格差」に興味があります。
とくに、子どもたちの間の経済的な格差、教育格差。
絶対的貧困、相対的貧困。
子どもたちは、自分が生まれる環境を選ぶことはできません。
環境は様々であり、スタートラインで差がついてしまうのも仕方がないことと言ってしまってよいのか。
その差は本人の努力次第で埋められるものなのか。
そんなことをこの数年考えています。
そんな中、世界中に新型コロナウイルスが流行しました。
日本でも、流行をできるだけ抑えようと、一斉休校、外出自粛となりました。仕事をしたくてもできない人が増えました。
急にこのような状況になった場合、もともとぎりぎりで頑張っていた人たちがすぐに大きな影響を受けると思います。そしてやはり一番考えなければいけないと思うのは、弱い立場である子どもたちへの影響。
休校になっても、ネット配信や通信教育、もともとの自主学習ができる子どもたちはなんとか学力や生活習慣をキープできるかもしれません。でも、もともとそのような学習ができる環境が整っていない場合、この数ヶ月の影響はもしかしたらその子の一生に関わる大きな影響を残してしまうのではないかと心配でなりません。
そんな状況の中、「ベーシックインカム」についての本を読みました。
ベーシックインカムとは
ベーシックインカムとは、個人に対して、無条件に、定期的に(たとえば毎月など)、少額の現金を配る制度のことです。
無条件に、というのは、
- 所得制限を設けない
- お金の使い方に制約を設けない
- 受給者の行動に制約を設けない
ということです。
今回の感染症流行など、予想外の大きな出来事が起きた場合にも、できるだけ耐えられるような仕組みとしても、ベーシックインカムは有効なのかもしれません。
本書は、ベーシックインカム推進派の著者によって、ベーシックインカムとは何か、よくされる批判とそれに対する反論、ベーシックインカム以外の方法ではどうか、現在世界で行われている試験プロジェクトなどについて、とても分かりやすく書かれていました。
この本を読めば、ベーシックインカムについて一通り学ぶことができると思います。
ロールズの「格差原理」では、最も弱い人たちの状況が改善して初めて、その政策によって正義が実現されたと考える。この原理を応用した「安全格差原則」を提案したい。政策が社会正義にかなうと言えるためには、最も安全でない生活を余儀なくされている人たちの状況が改善しなくてはならないという考え方だ。
ベーシックインカムへの道
また、これまで私はあまり意識していなかったのですが、ベーシックインカムは最近注目されている行動経済学の考え方とは相容れない部分があるようで(この著者の考えなのかもしれませんが)、ナッジ(軽く肘でつつく)を利用した行動経済学の考え方に対して、批判的に書かれていました。
今日の社会政策の骨格には、民主的なプロセスを経ることなしに、そうしたリバタリアン・パターナリズムの発想が組み込まれている。このアプローチを正当化する論者によれば、人々が特定の選択肢を選ぶように「ナッジ(軽く肘で押す)」することが「本人のためになる」と言う。しかし、この主張は道徳に反する。ナッジ論者たちは、自分の言葉に責任を持たないからだ。自分たちが人々に取らせようとする行動が最善だと主張するのなら、それが悪い結果をもたらした場合は、操作された人たちではなく、操作した人たちが責任を取らなくてはおかしい。ナッジされた福祉受給者たちは、悪い結果になった場合に国家から補償を受けてしかるべきだ。しかし、実際はそうなっていない。
ベーシックインカムへの道
ベーシックインカムへのよくある批判
また、ベーシックインカムへのよくある批判として、「財源はどうするのか」「全員に一律に給付することによって働く意欲がなくなるのではないか」ということへの回答もされています。
財源はどうするのか
前者に対しては、どれくらいの給付を行うかにもよるが、様々なシミュレーションからは十分可能であり、社会が本気で社会正義や自由を重んじるのであれば不可能ではない、と結論づけています。
また、政策コストの面からも、資力調査型給付(年収によって給付額を変える)よりも、ベーシックインカムとして全員一律に給付しておいて、高所得者からは税としてたくさん払ってもらう、という方がコストを抑えられるそうです。
働く意欲がなくなるのではないか
後者に対しては、そもそも金銭報酬がない労働を仕事と認めないのはおかしい、ベーシックインカムによって最低限の安全と自由が保証されることで、人はより「やりたいこと」「できること」をする自由が与えられる、と言っています。
働く権利とは、金銭報酬が支払われるか支払われないかに関係なく、いかなる形態であれ、自らが価値を見出せる活動に従事し、質の高い生活を送る権利のことである。人はみな、コミュニティ全体の利益を尊重することを前提に、自らの活動が生み出す果実と知的財産に対する権利を持っている。
ベーシックインカムへの道
『絶望を希望に変える経済学』という本にも、財源のことを考えて、ごく少額を給付するユニバーサル・ウルトラ・ベーシック・インカムを行うことで多くの人々を貧困ライン以上に押し上げることができるだろうと書かれています。
まとめ
私はまだベーシックインカムがいいのかどうか、自分の意見として言えるところまではいっていませんが、今まで考えたことのなかった新たな視点で世の中を見ることができるようになったように思います。
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