新潮クレスト・ブックスというシリーズが好きです。
新潮クレスト・ブックスは、海外の小説、ノンフィクションなどを取り上げているシリーズです。まだ日本であまり知られていない作家を扱っていることも多く、私もこのシリーズで初めてジュンパ・ラヒリを知りました。
取り上げる作品の質もさることながら、私がこのシリーズで好きなのは、その装丁です。
表紙の質感やイラスト、紙の手触りなど、ひとつひとつにこだわりを感じます。
公式サイトを見ると、ブックデザインについても書かれてあって、やっぱり相当こだわって作られていたんだなと納得しました。
今日は、そんな新潮クレスト・ブックスの中で、私の大好きな3冊をご紹介したいと思います。
『パリ左岸のピアノ工房』 T.E.カーハート
私は小学校入学前から高校生までピアノを習っていました。そこそこ長期間習って分かったのは、自分には才能がないなということ。
でもピアノを弾くことは好きだったし、ぷくぷくした指の、お母さんみたいな先生のことも好きだったので、ずっと続けていました。
そして、大学受験を経て医学生となり、初期研修が終わるまでピアノとは離れていましたが、もう一度習いたくなって26歳ごろから再びピアノ教室に通い始めました。
今でも細々と続けていて、先生とももう10年以上のお付き合いです。さらに今は子供も同じ先生のレッスンを受けています。
大人になってレッスンを再開した頃に読んだのが、この『パリ左岸のピアノ工房』です。
パリに住む著者が、近所にピアノ工房を見つけ、昔習っていたピアノをもう一度習いたいと相談するところから始まります。そこは修理を待つピアノたちが次々に運ばれてくるところでした。個性的なピアノたち。
その中で気に入ったピアノを自宅にお迎えした著者。弾くことを純粋に楽しむ姿に、大人は、うまく弾こうとか一番になろうとかじゃなく、ただ楽しく弾けばいいんだと思えました。
小説みたいな、素敵なノンフィクション。
同じように、子供の頃ピアノを習っていたけどしばらく弾いてないな、という大人は、この本を読むとまたピアノを触りたくなるんじゃないでしょうか。
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『ペンギンの憂鬱』 アンドレイ・クルコフ
これは完全に表紙で買いました。寺田順三さんですね。でも読んでみて、買ってよかったと思えた本。
主人公の男性ヴィクトルは、動物園で飼えなくなった皇帝ペンギンのミーシャを引き取って育てています。偶然のような感じで、ヴィクトルは、新聞にまだ死んでない人の追悼記事を書く仕事を始めます。
やがてヴィクトルの家のまわりで次々と起きる不穏な事件。家の中での、ペンギンと、預かっている知人の娘とのほんわかした雰囲気とのギャップが不気味さを増していきます。
どこまでが現実でどこからが非現実なのか?
そのギャップをペンギンの存在がうまくつないでくれているように思いました。
作者はウクライナのロシア語作家。この『ペンギンの憂鬱』で一躍有名になり、約20か国語に翻訳されているそうです。
小川洋子さんの小説が好きな人にはとくにおすすめな気がします。
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『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ
新潮クレスト・ブックスといえば、私はジュンパ・ラヒリをイメージします。
ジュンパ・ラヒリはインドで生まれ、アメリカで育ちました。最近では、母国語ではないイタリア語で作品を書いたりもしています。
『停電の夜に』には9つの短編が収録されています。表題作の「停電の夜に」は、毎日午後8時から9時の間、工事のために停電となる5日間に、ギクシャクした関係の夫婦がろうそくの灯りのもとで、一つずつこれまで隠していたことを告白する、という話。二人の関係はどうなるのか、結末は予想外で、胸がキュッとなりました。
静かなトーンの中に、家族のつながりとは何か、とか、気持ちが通じ合うと思ったらちょっとずれる、みたいな心の動きが描かれています。
静かな夜に一人で少しずつ読みたい作品です。
まとめ
以上、新潮クレスト・ブックスで私が好きな本を3冊ご紹介しました。
やっぱりこのシリーズは、所有する喜びを満たしてくれる気がします。
最近本はもっぱらKindleで読んでいて、紙の本はこの春に200冊くらい処分したのですが、新潮クレスト・ブックスはこれからもずっと手元に置いておくでしょう。
他にもいい作品、装丁が素敵な作品がたくさんあると思いますので、みなさんのおすすめも教えていただけると嬉しいです。
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