生きることとは宇宙を目指すこと
NASA JPL(ジェット推進研究所)で働く日本人、小野雅裕さんの本。
東大からMIT(マサチューセッツ工科大学)留学、いったんは夢を諦めて帰国し慶應義塾大学の助教になりましたが、その後NASA JPLで働くという夢を叶えるまでの道のりが描かれていて、読むたびに勇気づけられます。
宇宙を目指す
小野さんがそもそも宇宙に興味を持ったのは、小学生くらいの時に、光学エンジニアで天体マニアのお父さんが天体望遠鏡を買ってくれたこと。
ここで重要だったのは、お父さんは決して教育のために買ったのではなく、ただただ純粋に自分が欲しかったから。
そしてまた、お父さんは小野さんに宇宙の広大さについても語ってくれました。
いま、地球をビー玉の大きさに縮小し、あなたの掌の上に置いたと想像してほしい。東京スカイツリーはたった0.00075ミリの高さだ。飛行機はビー玉の表面からわずか0.01ミリの高さを飛んでいる。国際宇宙ステーションの高度ですら立ったの0.5ミリだ。
プロローグ 〜青き夢〜
では、このスケールで測ると、太陽系の星々まではどのくらいの距離になるだろうか。月までは45センチ離れている。太陽は180メートルも先にある。しかし宇宙はまだまだ広い。接近時の木星までの距離は750メートル、土星は1.5キロ、天王星は3キロ、そして海王星までは5キロもあるのだ!
(中略)幼少の頃に父親がしてくれたこの話から、宇宙がどれほど大きいのか、そしてそれに比して地球がどれほど小さいのかを知った。その時に受けた感銘は今も消えずに残っている。
MIT留学のこと
小野さんは東大からMITへ留学します。もちろんもともとの頭の良さとものすごい努力のおかげだとは思いますが、それに加えて環境に恵まれていた、と自分でおっしゃっていたところにすごく好感が持てました。
また、理系の研究職だからといって理系科目だけ勉強していれば良いのではなく、国語力が大事、と言います。
(ア)から(エ)の選択肢から正しいものを選びマークシートの該当する記号を塗りつぶす能力や、計算した結果を小数点以下第二位まで回答欄に記入する能力だけでは、研究費を取ることも、プロジェクトを立ち上げることも、新発見の価値を世に知らしめることもできない。自分の考えを言葉で記し、文章に書いて他人に伝える「国語力」こそ、理系の人間に最も必要とされる能力なのだと僕は思う。
第4章 国語力:伝えられなければどんな発見もないのと同じ
なぜ宇宙開発に大枚をはたくのか
なぜ、今の時代に多額の税金を使ってまで宇宙を目指さないといけないのか。
この質問に対して小野さんは、人が何かで歴史に名を残そうと思うのと同じように、人類文明も、自らの存在価値として「芸術、科学、冒険」を前進させようという力がある。宇宙開発は、人類文明が「自らの存在価値を求めんとする精神的な営み」なのだ、という一つの答えを出しています。
僕は、僕自身がメメント・モリと自問し人生の意義を探し求めているように、この人間文明も、メメント・モリと自らに問い、その存在の意義を求め続けていくべきだと思うのだ。僕が後世に残る仕事をしたいと思うのと同じように、人類文明もその存在の価値が後続の文明に認められるような仕事をするべきと思うのだ。
第16章 夢と死:宇宙開発の意義とは
そして僕は、人類文明をそのような高みに持ち上げることに、この人生をかけて、微力ながら貢献したいと思っている。それこそが、僕がJPLで働く理由、宇宙開発の仕事にこの一生を捧げようとする理由である。
名言集としても
本書には、小野さんがおそらくずっと大事にしている名言・格言が多く載せられています。
私が最初にこの本を読んだときから、ロベルト・バッジオというイタリアのサッカー選手の言葉がとても印象的で、今もよく思い出しています。
1994年のワールドカップ決勝戦でPKを外したことで猛烈な批判にさらされたときに言った言葉だそうです。
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」
ロベルト・バッジオ
仕事で、勇気を持って踏み出さないといけない場面もあるのですが、その度にこの言葉で自分を鼓舞しています。
まとめ
何度か読み返していますが、そのたびに、私もがんばろう!と前向きな気持ちになれる本です。
若い人たちはもちろん、そうでない人も、いくつになっても夢は叶えられると信じる力がもらえます。
みなさんにぜひ読んでもらいたいです。
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