Development of a prediction model for child maltreatment recurrence in Japan: A historical cohort study using data from a Child Guidance Center
Hiroyuki Horikawa et al.
Child Abuse & Neglect 59(2016)55-65
DOI: 10.1016/j.chiabu.2016.07.008
Abstract
不適切養育が最初の報告から1年以内に再発することの予測モデルをつくるために、後ろ向きコホート研究を行った。研究は、1996年4月から2011年3月に滋賀中央児童相談所に報告のあった、それまでにサポートサービスを受けていない716例の不適切養育ケース(身体的虐待、精神的虐待、ネグレクト)に関する行政データを用いて行った。児童、不適切養育の内容、虐待者、家庭などに関する合計23項目が予測因子として選ばれ、多変量解析が行われた。ステップワイズ法により、6つの要因が特定された。すなわち、児が9〜13歳(AOR=3.43/95%CI=1.52-7.72)、虐待者が40歳未満(AOR=1.65/95%CI=1.09-2.51)、虐待者に幼少時の被虐待歴がある(AOR=2.56/95%CI=1.31-4.99)、経済的不安定または貧困家庭(AOR=1.68/95%CI=1.16-2.44)、委託先が公的機関のみ(AOR=2.21/95%CI=1.24-3.93)の6つである。これらの6つの予測因子を用いて、感度45.2%、特異度82.4%の線形予測モデルを作成した。このモデルは、今後起こりうる不適切養育を評価することに有用であり、子供や家族の福祉行政が再発予防対策を進めるのを助けるだろう。
Background
虐待のハイリスク家庭を拾い上げるチェック項目はたくさんあります。ひとり親家庭、貧困家庭、親のメンタルヘルス不調、同胞への虐待歴、親の被虐待歴などなど。でも、これらすべての項目が全部同じように要注意というわけではなく、それぞれのリスクによって重みづけをし、要注意項目を絞ることで、本当に必要な家庭に必要な支援が行えるようにしたい、というのがこの研究の目的なのかな、と思います。
この研究では、一般によく使われている、児や不適切養育の内容、虐待者、家庭に関する23のリスク因子について多変量解析を行い、6つの項目が1年以内の不適切養育再発に関して特に重要な因子であるとしています。それは以下の6項目です。
- 児の年齢(13歳以下、特に9-13歳)
- 虐待者が40歳未満
- 虐待者に幼児期の被虐待歴がある
- 経済的に不安定または貧困家庭
- 児を見守るコミュニティメンバーがいない
- 委託先が公的機関しかない
これらの因子に、多変量解析の結果からスコアをつけており、合計点によって介入の重要度を分類しています。
9-19点 low risk care
20-27点 medium risk care
28点以上 high risk care
この研究のLimitationとしては、
- 各スケール評価が個人の主観的判断によっている
- 単独の児童相談所での研究であり、地域差があるかもしれない
- 観察研究である
Summary
不適切養育の再発リスク予測因子に関するとても興味深い論文でした。たくさんあるリスク因子を重みづけすることで、より関連する6つの因子を抽出したこと、さらに、スコアリングすることでリスクの高さを3つに分類し、ハイリスク群にはより素早く濃厚な支援が行えるようにする、という考え方は非常に実践的だと思いました。
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