2019年に制定された「改正労働施策総合推進法」いわゆる「パワハラ防止法」のなかで、性的指向・性的自認に関するハラスメントもパワハラと位置付けられました。
LGBT総合研究所が行った「LGBT意識行動調査2019」によると、日本におけるLGBTの割合は約10%だそうです。それだけ学校や職場で接する機会があるのに、まだまだ理解が進んでおらず、当事者が嫌な思いをすることがなくならない。そんな状況をどうにかしたいという思いから書かれたのがこの本です。
『性転師』の著者、伊藤元輝さんがおすすめしていたのをTwitterで見て買いました。この本の著者の松岡さんはゲイの当事者、神谷さんは全国のLGBT関連団体から構成されるLGBT法連合会の事務局長です。
LGBTは知ってるけど、SOGIやアウティングというのは初めて聞きました。
SOGIハラの加害者にも被害者にもならないように、知っておきたいことがたくさん書かれているよ。
LGBT・SOJI・アウティング
LGBTとは
LGBTとは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字を取った言葉です。Q(クィア:Queer、クエスチョニング:Questioning)を加えてLGBTQとする場合もあります。
性の多様性を考える上で、
- 法律上の性別
- 性自認(自分の性別をどのように認識しているか)
- 性表現(社会的にどのように振る舞うか)
- 性的指向(恋愛や性愛の感情がどの性別に向くか)
の4つの要素に分解して考えるとわかりやすいようです。それぞれ「男」「女」のどちらかに決められるものではなく、グラデーションがあると考えた方が良いです。
SOGIとは
SOJIとは性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字をとったものです。つまり、SOGIハラとは、SOGIをネタにしていじること。「ホモ」「レズ」と言って侮辱するのはもちろん、「あの人ホモっぽいよね」などと嘲笑することもSOGIハラです。また、性自認と異なっているのに戸籍上の性だからと制服などを強要することも含まれるそうです。
アウティングとは
本人の了承を得ずにその人が公にしていない性自認や性的指向を暴露することをアウティングと言います。アウティングもSOGIハラのひとつです。
カミングアウトされた人は、良かれと思って他の人にも伝えようと考えるのかもしれませんが、当事者にとってはとても嫌なことです。カミングアウトされたということは、この人には言っても大丈夫、と思ってもらえたということなので、その信頼を裏切るようなことはしたくない。まずは本人に誰がどこまで知っているのか確認すること。勝手に言いふらすのは絶対ダメです。
LGBTへのよくある勘違い
本書には、LGBTに対するよくある勘違いのパターンがまとめられています。
ネガティブなものとして、「LGBTは自然に反する」と言って嫌悪感を示す人、「うちの職場にLGBTはいない」と思い込む人、LGBTの周りにいる人はみんなLGBTだと思い込んでいる人、などなど。
また、差別するつもりはないけど過剰に反応してしまったり、理解しているよとことさらアピールするような「一見ポジティブ」な勘違いも多いそうです。「何がNGワードか」だけを気にする人、「私は気にしない」が「差別しない」だと思っている人、などです。
LGBTに限らないよくある勘違い
セクシャルマイノリティに対してだけでなく、マジョリティに対してもアウトな対応もあります。初対面で「彼氏・彼女いるの?」と聞く、飲み会でとりあえず女装すれば盛り上がるだろうと思っている、などです。
交際相手に関する質問などは、性的指向がどうであれ、話題にしたくないと思う人も多いと思います。LGBTであろうとなかろうと、その辺りのセンシティブな話題を相手が嫌がっているのかいないのか、それくらいは感じられるような人間でありたいです。
まとめ
当事者目線で見た、よくある勘違いや、法的整備が進んできていることなど、とても勉強になりました。法律でパワーハラスメントとしっかり規定されましたが、「これはセーフ?アウト?」とひとつひとつ考えるのではなく、多様性を受け入れ、人としてこんなことされたら嫌かな?と考えれば分かるのではないかな、とも思いました。
ただ、飲み会での女装や、「私は気にしない」というのは思考停止、など、やはり当事者でないと流してしまいがちなこともあるので、今回いろいろなパターンを知ることができてよかったです。
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