Predictors of Outcomes in Hypoxic-Ischemic Encephalopathy following Hypothermia: A Meta-Analysis
Sabine Ouwehand et al.
Neonatology
Published Online: April 1, 2020
DOI: 10.1159/000505519
Abstract
Introduction:低酸素性虚血性脳症(HIE)の神経発達予後の予測は今も重要なチャレンジである。多くのスタディにより、低体温療法(TH)導入後、それその評価方法ごとに予後予測能が異なることが分かってきている。HIEへのTH導入後の予後予測正確性について検討した。
Methods:EmbaseとPubmedを使ってsystematic literature searchを行った。二人のレビュワーが独立して的確な論文を採用し、データの抽出を行った。研究の質はQuality in Prognosis Study Toolを用いて評価した。可能であればメタアナリシスを行った。
Results:47の論文と3の学会抄録が採用された。3072人の新生児が報告されており、そのうち39%が死亡または神経学的予後不良であった。37の論文を用いてメタアナリシスを行った。EEG、MRI、DWI、MRS、24時間と72時間のaEEGが高い診断ORを示し、6時間のaEEGとEEGは特異度が低く診断ORが低かった。MRIに関しては、多くの論文が早期(8日未満)でのMRIの方が慢性期(8日以降)でのMRIよりもよいと報告している。MRIでの内包後脚障害、DWIでの視床障害は、1H MRSでのlactate/NAAピーク上昇と同様に、強力な予後予測因子だった。
Conclusions:低体温療法の時代において、様々な評価方法が神経学的予後のよい予測因子となっている。しかし、タイミングも重要で、aEEGは24時間では偽陽性になり得る。対照的に、MRIは後になると予測因子としての価値が下がるため、最初の1週間で行われるべきである。
Background
低酸素性虚血性脳症と低体温療法
先進国での新生児低酸素性虚血性脳症(HIE)の発症は、出生1000に対して数件程度と言われており、頻度としては高くはありませんが、中等症から重症HIEでは死亡や重度の後遺症をきたすことから、世界的に治療法の模索へのモチベーションが高い分野です。
現在のプロトコールは、在胎36週以上で出生した児で、中等症から重症のHIEに対しては、低体温療法が行われるべきで、その方法は、生後6時間以内に冷却を開始し、深部体温33〜34度を72時間維持した後、6〜8時間かけて復温するというものです。
症例が蓄積されるにつれて、不良予後と関連する臨床因子、検査所見が数多く報告されてきています。
aEEG
aEEGが正常トレースへ回復する時間と18か月時の神経学的予後との関連が指摘されています。
低体温療法を施行しない場合、全例が生後24時間までに正常トレースに回復し、低体温療法を施行した場合には、全例が生後48時間までに正常トレースに回復しています。
また、低体温療法思考の有無にかかわらず、72時間を超えて正常に戻らなかったケースは72%が死亡し、神経学的予後が不良だったという報告があります。
今回の論文でも、冷却が終わる72時間時点でのaEEGが良い予後予測因子になる、という結果でした。
MRI
MRIでは、深部灰白質と内包後脚に注目すべきで、これらの病変がとくに予後との関連が強いということが分かっています。
基本のT1・T2強調画像であれば日齢5〜14に撮影することが望ましいとされていましたが、今回の論文では、8日以降では予後との関連が低くなるため、7日までに行うほうが良いという結果でした。
MRIはタイミングによって撮像法の優先度が異なるとされています。
1H MRSなら急性期の日齢1から慢性期の日齢30まで幅広く有効
新生児低体温療法実践マニュアル
日齢2-5なら拡散強調画像を優先
日齢5-14ならT1・T2強調画像を優先
Summary
低体温療法導入後のHIEの予後予測について、aEEGやMRIの有用性が確認されましたが、その実施タイミングが重要ということでした。
HIEへの低体温療法に関しては他に、明らかに中等症以上とは言い切れない、ボーダーライン上の症例に実施すべきかどうか、は最近のトピックの一つかなと思います。
参考書籍
新生児低体温療法実践マニュアル
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