【レビュー】突っ走る酵母愛『発酵野郎!』鈴木成宗

小さく素早く始めて、ダメならば修正する

伊勢の餅屋の21代目が微生物に魅せられ、ビール作りの道へ進み、ついにはビール界のオスカーと言われるインターナショナル・ブルーイング・アワーズ(IBA)で金賞を取るまでに至る道のりを描いたエッセイです。

ビールをあまり飲まない私でも、その突っ走り方には感動を覚えました。

目次

クラフトビールとは

クラフトビールとは、明確な定義はないものの、一般的に小規模の醸造所(ブルワリー)が作る個性的なビールのことを言います。

日本ではのどごしの良さが特徴の「ラガー」が主流でしたが、小規模醸造所が広がってきたことで、風味や香りを重視する「エール」を中心に多くの種類のビールが親しまれるようになりました。

社長の酵母愛

鈴木社長は、進学した東北大学農学部で微生物に魅せられ、ビールを作るもとになる酵母のとりことなります。

最近は、酵母愛をあらゆるところで喧伝しているせいか、ビール業界の関係者にも、「なんでそんなに酵母に熱心なんですか」と聞かれる。私に言わせれば、なんで面白いと思わないんですか、酵母を採取しないんですかと聞きたい。登山家がそこに山があるから山に登っているように、酵母家の私はこの地球に酵母があるから、拾ってきて慈しむのだ。多様なんていう言葉では足りない世界だ。おもしろいビールを生み出してくれる酵母と劇的な出会いがあるかもしれない。とはいえそんなことを考えると、今でも時折仕事も何もかも放り出して酵母を探しに行きたい衝動に駆られる。自然の酵母の採取にのめり込むあまり、社長業の傍ら、40歳を過ぎてから三重大学大学院に入学し、博士号まで取得してしまったほどだ。誰に頼まれたわけでもないのに。

はじめに

鈴木社長の持論は「ビールは生きもの」。この本を読むと、ビールは多くの微生物の力によって作られていることがわかり、まさに「生きもの」だと言うことがよくわかりました。

突っ走る科学者

とにかく酵母への愛がすごい鈴木社長ですが、基本は理系の科学者です。東北大学農学部に在籍中、研究室の教授に言われた言葉を今でも社員に伝えているそうです。

最善をつくすために考え尽くしたのか?必要な材料を集めたのか?あてずっぽうでやるな。ファクトにもとづけ。

1章 餅屋で終わってたまるか

本書を読んでいて、うすうす感じていたことですが、著者自身も自分にはADHD傾向があると言っています。やりたいと思ったことを飽きるまでとことんやって、飽きたら別のことをやる。それを高速で繰り返しているうちに、興味の対象が以前やっていたことの延長線上に戻ってくることがあり、またそれをやる。最終的に世界一のビールを作った鈴木さんが書いたこの本を読むと、それでいいんだ、と思えました。

伊勢のクラフトビール

鈴木社長のビールづくりも最初から順風満帆だったわけではありませんでした。

美味しいビールを作るまでの試行錯誤、マーケティング・・・たくさん失敗しながら、どうすればうまくいくかを考え、前進していく姿には勇気をもらいました。

本書でも書かれていますが、とりあえずやってみて、失敗して学ぶ。必死にやっていれば救世主が現れる。それが強み。

ビールを完成させるには失敗の数がモノをいう世界なのだ。失敗とは、おいしくないビールができる方法を知るということだ。

3章 ビール・サイエンス・ラボを目指す

ビール・サイエンス・ラボ

ビールの品質を決める要素には、ホップ、水、酵母などがあります。科学的なアプローチが必要であり、かと言ってマニュアル通りでもうまくいかず、微妙な調整も必要だそうです。

どういったビールが作りたいか、という理想があって、それにどう近づけていくか、努力を重ねて初めて私たちが美味しいビールを飲むことができるんだなあと思いました。

まとめ

職場でこの本がおもしろいと熱く語っていたら、ちょうど伊勢に旅行に行った同僚がお土産に伊勢角屋麦酒のエールビールを買ってきてくれました。

今まで飲んだことのない爽やかな柑橘系の香りにびっくりしました。ホップや酵母の違いでこんなに変わってくるんだ、と思いました。
奥深い発酵の世界を垣間見た一冊でした。

同じく「発酵」つながりで、アジアと日本の納豆について調べた高野秀行さんのルポ『謎のアジア納豆』もとてもおもしろかったです。
関連記事>>【レビュー】『謎のアジア納豆』高野秀行

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 更新お疲れ様です。
    ブログ大変楽しく読ませていただいています。
    選定されている本にhibinoさんの個性が表れていて素敵なブログだと思いました。
    これからも更新楽しみにお待ちしてます。

    • もんじさま
      コメントありがとうございます!そう言っていただけて本当に嬉しいです!
      ちょっとでも面白そうだな、読んでみたいな、と思ってもらえるような記事を書いていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

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