タイトルの「アーモンド」というのは、脳にある扁桃体という部分を表しています。主人公のユンジェは、この扁桃体が生まれつき小さく、そのため感情が感じられず、人の感情も理解できない少年です。このような病気をアレキシサイレミアというそうです。
本書のタイトルと表紙を見ただけでは、普段自分から読むタイプの本ではありませんでした。でも、Twitterでフォローしている人がすごく良かったと言っていたので読んでみたら、すごくおもしろかったです。
生まれつき感情がなく、恐怖とか喜びとか愛情とかがわからない。何があっても表情を変えないユンジェは、周りの人から浮いてしまって、避けられてしまいます。
そんなユンジェですが、お母さんとおばあちゃんに大切に育てられました。とくにおばあちゃんはユンジェのことを「私のかわいい怪物」と言って可愛がりました。ユンジェにはその「可愛がる」という感情もわからないのですが。
人から言われたことをそのまま言葉通りにしか受け取れない。お世辞を言ったり、謙遜したりすることができない。こんなことをしたり言ったりしたら相手がどう思うか想像できない。
そんなユンジェですが、乱暴者のジャイアンみたいなクラスメイト、ゴニとなぜか仲良くなって、「僕の大切な友達」という感情を少しずつですが理解していく、という物語です。
ゴニは、君にすごく興味があるんだ。君のことが知りたいし、君と同じ気持ちを味わいたいと思っているんだよ。・・・・ところで、話を聞いてると、いつもゴニの方から君に近づいてるみたいだな。一度くらい君から近づいてみるのはどうだ?
第2部
「感じられるようになりたいって思うようになったのは、いつからなんだ?」
第2部
「この間からです」
「何かきっかけや理由があったのか?」
「そうですね、みんなが観た映画を、僕だけ観ていないみたいな気がしてきたんです。観ないでも暮らしていけますけど、観た方がほかの人たちと話す話題が少しは増えると思うんです」
「驚くべき成長だな。今の君の言葉には、他人とコミュニケーションしたいっていう意志がこもってるよ」
訳者あとがきで、著者の言葉として紹介されていましたが、感情のないユンジェの視点で話が進むので、淡々と事実が述べられて、テンポよくストーリーが進んでいきます。そんな中に、少しずつユンジェに変化が見られていく様子がとても感動的でした。
コミュニケーションとは何か、共感するってどういうことか、いろいろと考えさせられました。
遠ければ遠いでできることはないと言って背を向け、近ければ近いで恐怖と不安があまりにも大きいと言って誰も立ち上がらなかった。ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。
第4部
感じる、共感すると言うけれど、僕が思うに、それは本物ではなかった。
僕はそんなふうに生きたくはなかった。
登場人物もみんな魅力的です。これまで韓国の作家さんが書いた小説を読んだことがなかったのですが、とてもおもしろかったです。翻訳もすごくいいからなんだろうなと思いました。小学校高学年でも十分読めそう。ぜひ皆さんに読んでもらいたい本だと思いました。
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