【レビュー】『教養としての「世界史」の読み方』本村凌二

早稲田大学国際教育学部特任教授で東京大学名誉教授の本村凌二さんが書いた、「世界史の読み方」の本。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。ビスマルク

本村さんは、国際社会における教養とは何か、という問いに対して、「古典」と「世界史」だと答えています。特に、専門であるローマ史には、人間の歴史の全てが詰まっており、ローマを勉強することで、成功した政治や人間が犯しやすい誤りを学ぶことができる、と言っています。

この本で、私たちがなぜ世界史を学んだ方がいいのか、そして、どのように学べばいいのか、が分かります。

高校生の時、私は理系クラスでマイナーな世界史選択だったけど、完全に暗記科目と思って勉強してた。

この本を読むと、世界史をただ暗記科目として勉強するのはもったいないなと思うよ、きっと。

目次

文明はなぜ大河のほとりで起こったのか

教科書で必ずみる四大文明。エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明、その全てが大河のほとりで発祥しています。

その理由として著者は、文明発祥に「乾燥化」が必要だったから、と主張しています。

文明発祥に必須なもの、それは「乾燥化」です。乾燥化と、それに伴う人々の水辺への集中が、なぜ文明発祥に繋がるのかというと、少ない水資源をどのようにして活用するか、ということに知恵を絞るからです。つまり、環境的に恵まれなくなったから文明が生まれた、と言っても過言ではないのです。まず、人の生存に欠かすことのできない「水」が非常に大きなファクターとなり、人口が一か所に集中することで、それまで小さな村ぐらいでしかなかった集落が都市的な規模になる。その結果、水争いを防ぐための水活用システムが生まれ、そうしたことを記録する必要から文字が生まれたのです。

第1章 文明はなぜ大河の畔から発祥したのか

日本で文明が発祥しなかったのは、乾燥化しなかったから。日本では水が豊か。むしろ治水に力を注がないといけないくらいだったんですね。

日本とローマ帝国との比較

ローマの歴史の中には、人類の経験の全てが詰まっている」と丸山眞男は言いました。

ローマ帝国が、なぜあれだけ安定した支配を続けられたのか、そして、なぜ滅亡してしまったのか。そのことは、ほかのすべての文明を考えるうえでの一つの指針となり得ます。

ローマを帝国にならしめたものが「寛容」だとすると、滅したものは何か。私はこれも一言で言うなら、「ヒュブリス(傲慢)」だと思います。

第2章 ローマとの比較で見えてくる世界

さらに、江戸時代の日本とローマ帝国。時代も国も全然違いますが、多くの共通点がある、と著者は言っています。例えば水道設備が整っており、街がとても清潔。ローマでの「風刺詩」と江戸の川柳や狂歌など。

やっぱりもう一度塩野七生さんの『ローマ人の物語』を読み直そう。

民族大移動と現代の難民問題

世界中で昔から何度も起こった民族大移動。人はより良い場所を求めて移動したがる性質があり、現代の難民問題を感あげるうえでも民族大移動の観点から見えてくるものがある、と著者は書いています。

人々が移住する理由として大きいものとして、気候変動、奴隷制度、宗教弾圧があります。このような理由による人の移動は昔から何度も行われてきました。その中で問題になるのは、価値観の違う人々が一気にたくさん入ってくることで、もともといた人たちとの間で軋轢が生まれることです。

人の動きが自然なもの、必要なものだとするなら、それを無理に規制するのではなく、受け入れる側、移動してくる側、それぞれがお互いの価値観を尊重する必要があるのかなと思いました。

例えば、本来寛容だったローマ帝国がキリスト教を弾圧したのは、なぜか。

私はこのことについては、これまでもいろいろな著書でも述べているのですが、寛容なローマがキリスト教を弾圧するようになった最大の理由は、キリスト教徒たちが「キリスト教以外の神々はニセモノだ。そんなものを信じてはいけない」と主張したからなのです。ここで理解していただきたいのは、なぜ信仰心の篤いローマ人が、異なる神を信仰する属州の人たちに信仰の自由を認めたのかということです。
それは、ローマ人の信仰に対して口を出さないでほしい、という強い思いがあったからなのです。われわれはあなたたちの信仰に口を出さないから、あなたたちもわれわれの信仰に口を出さないでほしい、ということなのです。

第4章 なぜ人は大移動するのか

日本は島国で、大きな民族の流入とは無縁だったし、宗教よりは日本語という言語で繋がっている民族なので、宗教の問題は、なかなか想像することが難しいけれど、ローマ帝国も最初はキリスト教を弾圧し、その後公認したなど、大きなテーマの一つであったのだろうと思いました。

すべての歴史は「現代史」である

著者は、歴史を勉強する際のスタンスとして、「すべての歴史は現代史である」という立場をとっています。これは、歴史を考えるときには、今この時代の価値観を通して見ることになる、ということです。そのため、時代によって解釈が変わるのもあり得ることだし、過去のパターンを学ぶことで、現代の人がこれからの展開を予測し、問題を解決する方法を見出すことができるのです。

今から考えたらなんでそんなことが起きたのか、と思うようなことも歴史上はたくさんありますが、それをただ批判するのではなく、今だったらどうするか、これから私たちはどうすれば良いか、を考えるきっかけにすると良いのかなと思いました。

まとめ

ローマ史が専門の大学教授が、とても優しくわかりやすく、世界史の読み方について書いてくれた本でした。やっぱり歴史って面白い。決して過去の出来事を時系列に並べて暗記していくだけの科目では全くない、ということがよくわかりました。高校生の時、この本のように学ぶことができればもっと面白かっただろうな、と反省しました。きっと、歴史が好きな同級生たちは、自分でどんどん調べて楽しんで勉強してたんだろうな。もったいないことをした。

著者が大好きな言葉として、マハトマ・ガンジーの言葉が紹介されています。

明日死ぬと思って生きなさい。永遠に生きると思って学びなさい。
Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.

本を読んで興味を持った時代や人物のことを深掘りしてさらに自分で調べて考えてみるとおもしろそう。今は、アレクサンドロスとローマ史かな。

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