無料のウェブブラウザで検索して、無料のグーグル・ドキュメントで文書を作り、データのバックアップも無料のクラウドサービスを使えばどこでも仕事ができます。メールからTwitter、Facebookまで全て無料。さらに外出中のワイヤレス・アクセスも無料でできるところが増えてきました。
多くのものが無料になる裏には、大金を稼いている人がいる。そこにはどのような仕組みがあるのでしょうか。
無料サービスはたくさんあるけれど、ちゃんと利益が出る仕組みになってるんだよね?
無料からどのように利益が生み出されるのか、解説したのがこの本です。10年くらい前の本だけど、今読んでもなるほど、と思いました。
4種類のフリー
ビジネスにおける「フリー」のモデルとして4種類挙げられています。
- 直接的内部相互補助(無料サンプル)
- 三者間市場(広告収入)
- フリーミアム(多数の無料顧客と少数の有料顧客)
- 非貨幣経済(贈与経済、注目経済)
1、2は昔からあるビジネスモデル。3、4はインターネット時代に新しく生まれたモデルです。
これらはすべて、ひとつの事業の中で、あるサービスで出た損失を別のサービスで得た利益で補填すること、すなわち「内部相互補助」という意味で共通しています。
直接的内部相互補助
無料サンプルのコストを有料商品の売り上げでカバーする、将来の支払いが現在の無料をカバーする、など。消費者の気を引いて、他のものも買ってみようと思わせるスタイル。
三者間市場
全てのメディアの基本。広告主は広告を消費者に届けるためメディアにお金を払い、消費者は無料コンテンツを楽しむ代わりに広告主を支援する。
フリーミアム
少数の有料ユーザーが、多くの無料ユーザーをカバーする。典型的なオンラインサイトには、5%の有料ユーザーが残りの無料ユーザーを支えている、という5%ルールがあるそうです。SpotifyやEvernote、Canva、ノートアプリのBearなど、私自身、無料でも使えるけどあえて有料会員になっているサービス、たくさんあります。
非貨幣経済
対価を期待せずに何かを人にあげること。Googleで検索するたびに実はユーザーはGoogleのアルゴリズムに情報を与えて精度を上げることに貢献しています。また、作家さんは、年々縮小する書店での棚を求めるよりは、無料で提供してでもまず自分を知ってもらいたい、というモチベーションがあると考えられます。無料で試し読みをした後、本を実物の形で所有したいと思う読者も多いでしょう。
フリーの強み
いくらであってお料金を請求することで、心理的障壁が生まれ、多くの人はわざわざその壁を乗り越えようとは思わない。それに対して、フリーは決断を早めて、試してみようかと思う人を増やす。フリーは直接の収入を放棄する代わりに、広く潜在的顧客を探してくれるのだ。
第4章 フリーの心理学
また、無料でない物を選ぶと、それが失敗だったときのことを恐れる気持ちが出てしまうけれど、無料であれば、目に見えて何かを失うという心配はありません。だからどちらかというと無料のものを選ぶ、ということもあります。
ムーアの法則
情報が主要な構成要素となる産業なら何でも、価格を下げながら性能をあげていきやすい。ムーアは「コンピュータの能力が2倍になれば、コストは半分になる」と主張しました。DNA配列検査も、コストはどんどん下がり、精度は上がって行っています。腕力中心から頭脳中心に変わることで、幾何級数的な成長と価格の下落とが見られることになります。
また、有名な雑誌編集長はこう言いました。
「潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる」
また、母数が大きくなればなるほど、割合としては小さくても大きな影響を与えることができます。オンラインはコストが安い分、大量の広告を載せることで、実際にクリックする人の割合は小さくても、大きな利益を生むことができるのです。
グーグル・アドセンス の魅力
昔ながらの雑誌の世界では、記事同士やアート的要素が衝突することを避けながら紙面が構成されていくそうです。それに対してグーグル・アドセンスでは、広告とコンテンツとの一致が重要視されます。
オンラインでの広告のあり方は、従来のメディア広告とは根本的に違います。従来のメディア広告は、その商品に関心がありそうな10%の視聴者に届けるために、関心がない残り90%にも同じ広告を見せています。一方、グーグル・アドセンスでは、内容ともっとも関連がある人にだけ広告を見せます。関心がないわずか10%の視聴者をイライラさせてでも、商品に関心がありそうな90%の視聴者に届けるという考え方です。
著者は自分が個人的に作ったサイト上で、広告をなくしたほうがいいか、訪問者に尋ねたことがあるそうです。すると、大多数は広告の配信を続けてほしいと答えました。コンテンツとの関連が強いために、訪問者はもはやそれを広告と思わず、コンテンツの一部だとみなしていたということです。広告があることに気づかなかった、という意見も多かったようです。このエピソードはとても興味深かったです。
マズローの欲求5段解説
人間の欲求は5段階に分かれており、ピラミッドのように低次から高次へと進んでいく、とマズローは発表しました。非貨幣経済である、インターネット社会における評判経済や注目経済は、尊厳や自己実現という高次の欲求を満たしてくれる手段になり得ます。
まとめ
さまざまなサービスが無料で使えるのが当然のようになっていますが、それがどうビジネスになっているのか、豊富な例をもとにわかりやすく解説されている本でした。仕組みがわかると、使い方も変わる気がします。
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