藤井聡太さんが渡辺明さんを破り最年少で棋聖位を獲得しましたね。
さらに2020年8月、王位も獲得して二冠、そして八段に昇格しました!(2020年8月20日追記)
私は将棋はまったくわかりません。駒の動かし方も覚えられません。ですが、将棋棋士の方の話を聞いたり本を読んだりするのは好きです。
この本は、加藤一二三さんと渡辺明さんが将棋についての思いを書いたものです。タイトルには「天才」「藤井聡太」とありますが、それに特化した内容というよりは、もっと広い「私の将棋観」という感じでした。中程に二人の対談も収録されています。
私のように、将棋のことはよくわからない人でも「天才の考え方」に触れることができるのでおすすめです。
- 深く考えた経験があるからこそ直感が生きてくる
- 集中力の使い方をコントロールする
- ときには相手の目線で考えてみる
私は、大山康晴十五世名人から「大天才」と言われた。
直感の95%は正しいと信じる。
by加藤一二三
私は、アナログとAIの双方の良い部分を吸収している。
強さとは自分の性格をいかに長所として発揮できるか。
by渡辺明
今日は加藤一二三さんと渡辺明さんの対談本『天才の考え方 藤井聡太とは何者か?』のご紹介と、最後に私の好きな将棋に関する本を挙げてみたいと思います。
渡辺明の思考法
「本番」「練習」を分けて考えない
「何が本番で何が本番ではないのか」を区別はしていない、と渡辺さんは言います。プロはすべての対局が本番。ある1局だけが大事な本番というわけではないし、日常の一戦一戦の積み重ねの先にタイトルがある、気を抜けない厳しい世界ですね。
AIと将棋
渡辺明さんは将棋の研究にAIを活用しているということが知られています。プロの棋譜がリアルタイムで確認できる時代です。裏を返すと、1回使った手はすぐ相手に研究されるので使える寿命が短い、という状況になっているそうです。なので、新しい手を使うときにも「AIで試した評価は悪いんだけど、今日、この手を使って、相手が対応できなければそれでいい」という感覚にもなってきているそうです。
問われるのは記憶力より集中力
また、将棋に大切なのは記憶力よりも集中力だと言います。よく聞くのが、プロ棋士は理にかなった局面であれば10秒ほど盤面を見ればそれを再現できる、でも、ランダムに配置された盤面だと記憶できない。ただ単に記憶力がいいということではなく、実戦では場面ごとに集中して考える能力が問われているということのようです。
加藤一二三の思考法
直感精読
将棋には無限に近い手がありますが、感覚的にパッと次の手が浮かぶことがあるそうです。そんな時、加藤名人は他のすべての手を検討するのではなく、直感で浮かんだ手を優先的に考え、精読して確かな裏付けを持ってから指すそうです。初心者のうちは、直感を信じてどんどん指すことが大事、とも言っています。
そう言えるのはもちろんたくさん考えてきた経験があるからだと思いますが、将棋以外でも当てはまる思考法じゃないかと思いました。例えば医者の仕事もそうかもしれません。
「直感で手が浮かんだあとにも、それでいいのかと考えてみる必要はあるが、直感のまま指す方が正解になることが多い」
ひふみんアイ
加藤九段は、中原十六世名人との対局中、状況を打開する方法が見つけられなかったときに、相手が席を立った隙に相手側の席に座って盤面を見てみたそうです。そうすることで絶妙の手が見つかった、という経験をして、それからは「相手の側から考える」ことを大切にしているそうです。これが「ひふみんアイ」として有名になりました。この「相手の側に立って考える」というのは、将棋に限らず人生のあらゆる場面で生きてくる考え方だと思います。
藤井聡太さんについて
加藤さんと渡辺さんの対談部分で、藤井聡太さんについても語り合っています。藤井さんのデビュー戦で加藤九段が対局したそうですが、過去に加藤九段があまり成功していない作戦を序盤からぶつけてきたということで、「よく研究しているな」と思ったそうです。
また、藤井さんが大きな対局前にインタビューで答えていた「平常心で指す」とか「楽しみたい」という言葉については、本心はどうなのか、気になりますね、とお二人とも話していました。
これまで中学生でプロ棋士になったのは、加藤さん、渡辺さん、藤井さんの他、谷川浩司さん、羽生善治さんの5人しかいないそうです。中学生でプロになった「天才」という共通点はあっても、お二人の想像を超える部分が藤井さんにはあるのだなあと思って興味深かったです。
将棋関係の本
私は将棋はできませんが、将棋の世界に興味はあります。これまでに読んだ将棋関係の本をいくつかご紹介します。
『決断力』羽生善治
羽生さんは本もとてもわかりやすくておもしろいです。将棋が分からなくても、読むと得られるものが必ずあると思います。
『聖の青春』大崎善生
羽生善治、佐藤康光、森内俊之たちと同世代で、奨励会入会からわずか2年11か月でプロとなった村山聖さんの生涯を描いた一冊です。村山さんは同世代の天才棋士たちと肩を並べる実力の持ち主でしたが、病気により29歳という若さで亡くなってしまいます。村山さんの将棋へのひた向きな思い、師匠や著者の村山さんへの愛情があふれた感動作です。
『盤上の向日葵』柚月裕子
柚月裕子さんの推理小説です。遺留品の名駒を手がかりにして白骨死体事件を追う刑事と、プロ棋士の青年の人生が交差する作品で、とてもおもしろかったです。「将棋界の『砂の器』」とも言われているのも納得です。
まとめ
加藤一二三と渡辺明という「天才」棋士たちが、将棋に対してどのように向き合っているのか、また、次世代の「天才」藤井聡太についてどう考えているのか、将棋を知らない私も興味深く読みました。将棋ができたら人生もっとおもしろくなるのかもしれないなあと、ちょっと残念にもなりました。
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